「インターネットによる被災情報の提供・収集の取組」(Google シニア・エンジニアリング・マネージャー  賀沢 秀人 様)

「インターネットによる被災情報の提供・収集の取組」

Google シニア・エンジニアリング・マネージャー
  賀沢 秀人 様

<講師プロフィール>
1997年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。2006年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了。1997-2006年、日本電信電話(株)コミュニケーション科学基礎研究所にて、自然言語処理および機械学習の研究に従事。2006年より、グーグル株式会社にて、ウェブ検索および機械翻訳の研究開発に従事。2011年 震災後より、震災対応を兼務。博士(工学)。

 私のこれからの講演で皆様に知見を提供できるか疑問ですが、Google として震災対応の活動を中心に、あくまで「被災地の外から」という視点で、お話ししたいと思います。

震災発生時、東京でも大きな揺れを感じ、火災などの被害があり焦りました。Google には米国に「災害対策チーム」がありますが、日本にはありません。当時は、現場で対応できる者が集まって動いていました。

Googleが提供した災害対応のサービスはいくつかありますが、最も早く稼動したのはパーソンファインダー/安否情報システムでした。このシステムには、被災者・ユーザーを始め、地方自治体、警察庁、NHKや新聞社、携帯キャリア各社等から情報を提供いただきました。中には重複するデータがあると思いますが、最終的には67万件以上のデータが登録されました。

この他にも、避難所情報を地図上に表示しました。立ち上げ初日は社員が避難所の情報を集めて作業していましたが、その後、NPOやボランティアの方が自然に情報を登録するようになりました。現在は、避難所以外に仮設住宅が登録されています。Googleは土台となるプラットフォームを提供してはいますが、その活用方法はユーザーが自由に考え、活用しています。

プラットフォームという点では、放射線情報のマップはまさに個人がGoogleマップを上手に使った例だと思います。これは、公開されている文科省のわかりづらいデータを、一個人のユーザーが自発的に加工して、地図上に表示したものです。

Googleの活動ではありませんが、アマゾンの「欲しい物リスト」を活用した支援も興味深いものでした。避難所へ支援ツールを送るために活用されているのですが、4月上旬に現地を訪れた際に、チェーンソー等の具体的な要望が登録されていました。チェーンソーには驚きましたが、がれき除去には必須です。義援金よりも具体的で、活用している現地の方たちにも反応がよかったと聞いています。

アマゾンの欲しい物リストを利用した支援も、避難所の方への支援ツールに活用されています。これは、4月頭に稼働しチェーンソー等の具体的な要望に驚いたが、確かに、がれき除去には必須と感じました。義援金よりも具体的で、支援する側の反応も良かったです。

こういう活動は他にも多数ありましたが、僕が考えるに共通する点があります。またGoogleの例に戻りますが、避難所名簿共有サービスで説明します。

Googleはパーソンファインダーを立ち上げましたが、どう情報を集め、データベースを統合していくか悩んでいました。そんな時に、避難所に避難者している人の名簿が掲示されている様子を報道で見ました。さらに、画像共有ツールを使って、名簿の画像を載せたユーザーを発見しました。このアイディアをGoogleは借用し、避難所名簿共有サービスになりました。

サービス開始と同時に現地の避難所に名簿を画像で提供してくれるように呼びかけました、被災地の自治体にも連絡しました。予想以上に反応があり、画像はみるみるうちに数百、数千と上がってきます。次に問題になったのは、大量の画像では人名が検索できないということでした。すると、ネット上で、手作業で画像から名前を文字おこしして、パーソンファインダーに登録するユーザーが現れました。作業の手順を紹介したwikiページまで我々が知らない間に作られていました。その後、Googleが正式にネットにボランティアの協力を呼びかけ、5,000人以上の方が協力してくれました。すべてネットの活動のみで、お互いの顔も知らないような人たちが集まって14万件ものデータを登録してくれました。

ここにはひとつの流れがあります。

  1. はじめに発案者がいて、アイディアを公開した
  2. そのアイディアを大規模に展開 (避難所名簿共有サービスはGoogleでした)
  3. それに呼応した大量のユーザーが自発的に参加・拡大 それぞれ、個々人が自分の役割を果たしただけの「単独の動き」ですが、単独では機能しない事柄を「ネットが」繋いでいきました。まさに、社会の力としか言えないことが起きました。 要素にまとめると、下記の3つがまさにうまく噛み合ったと言えます。  1) 預ける: まず広く情報を公開・共有する  2) 見つける: その情報を活用する人が現れる・活用している人を見つける  3) 広める: ネットを使って拡大する

単純な話ですが、予想外の結果でした。

予測、計画ができない状況で物事をすすめるのは、1ステップごとに勇気がいります。空振りならまだしも、予想外の事態が発生するかもしれません。登録もない、顔も知らない状況で、信頼して預けられるのかという不安が全くなかったとはいいません。その度に、そのサービスが真にユーザーのためになると思えるのであれば、未知のリスクに戸惑うよりも、信じよう、やってみようで動きました。実際、名簿共有サービスへのスパム画像の投稿はほとんどありませんでした。

被災地の”外”からのお話でしたが、実際に被災地の”中”で何があったのかを知りたいと思っています。きっと被災地では、ネットが使える状況ではなく、Googleのサービスも利用されていなかったのではないかと思います。すでに、東海・東南海地震等が予想されていますが、その時には確実に東京、大阪が被災地になるでしょう。被災地の中で真に役に立った事は何か、反省と検証が必要だと考えています。