「東日本大震災と放送メディア」(日本放送協会仙台放送局 局長  菅 俊秀 様)

「東日本大震災と放送メディア」

日本放送協会仙台放送局 局長  菅 俊秀 様

<講師プロフィール>
東京大学文学部卒業後、昭和55年4月 NHK入局。昭和55年5月 福島放送局放送部、昭和60年8月 報道局政治部記者、平成10年6月 仙台放送局放送センター(放送)副部長、平成17年6月 ニュース7編集責任者、平成19年6月 報道局テレビニュース部長、平成21年6月 新潟放送局長、平成23年6月 仙台放送局長

皆さんよろしくお願いします。

今回の地震では、NHK仙台放送局も建物に被害を受け移転新築することとなりました。平成30年度オープンをめざし作業を進めているところです。建物に被害を受けましたが、幸い放送機能を失うことはなく、自家発電用等の燃料調達等に苦労しましたが概ね順調に放送を続けることができたと思います。

本日は「東日本大震災と放送メディア」というテーマを頂き、NHKとしての人命の安全確保やライフライン情報の提供といった役割を果たせたかを報告します。

3月11日午後2時46分に緊急地震速報を受け、当時の国会中継を直ちに中断し地震放送に入りました。
NHKでは震度6以上で地震報道へ切り替えます。

今回の地震で記憶に残るのは仙台平野の津波を撮影したヘリコプター映像ではなかったかと思います。
全国の方が息を飲んだと思います。映像の力は大変大きく、津波の怖さを伝えられたと思います。
仙台空港に常駐しているヘリは点検中で格納庫から出していたため、機体損傷等なく、すぐに取材体制を取ることができ、地震発生20分後には離陸できました。他社の機体は、損傷や津波の被害を受けたものもありました。
空港が海岸沿いに多いため津波への不安があり、現在は花巻空港へ常駐しています。

ロボットカメラ(お天気カメラ)を海岸線に各地に設置していますが、残念ながら停電により2、3時間で停止し、またコントロールに電話回線を利用しているため使用できなかったのが今後の課題です。

また、「避難」について、もっと強く呼び掛けられなかったのかとの反省があります。津波警報の空振りへの懸念もあり、視聴者への呼びかけは難しい判断です。発生4分後の大津波警報でありましたが、当時の画面では現地の潮位等にまだ変化がなく静かでした。大津波が迫っていたのですが、画面を見ていて、結果的に避難が遅れたのではないかとの反省があります。
当時、被災状況がわかる映像が少なく、東京では都内で発生した火災の映像を伝えていたほどでした。今後は大津波警報が出た際は、空振りを恐れず避難を呼びかける方針としました。

また、発災当時の画像が、停電のためテレビが使えず見られなかったので、見たいという要望があり、ホームページで提供しています。

次にラジオです。
停電によりテレビが視聴できないこともあり、ラジオを聴取された方が多かったと思います。
発災時は放送体制が整う迄の間、テレビ音声をラジオへも流していたため、聴取者には、よくわからない状態もありました。ラジオもできるだけ早く対応する必要があります。今回は40分後にラジオ放送の体制ができました。
最近地元の方から、テレビは良いが、ラジオは地元民放局が良かったとお叱りを受けました。
地元のきめ細かな情報提供ができたのか、反省しています。
このところ、ラジオのローカル番組が減る傾向にありましたが、反省を踏まえ再検討をします。
平時のローカル番組を通じて、地元の方々とメール情報のやり取り等、災害時の情報収集策を探っていきたいと思います。

テレビ・ラジオとも全国放送とローカル放送のスケジュールが決まっていますが、発災時は震災報道を全国放送で行い、ローカル放送が割り込む形となります。
その時、ローカルの情報はスクロールスーパーで伝える方法があります。逆L放送とも呼んでいますが、今回は全国放送が逆Lで伝え、これに仙台放送局と、地元局の情報がそれぞれ逆Lで提供され、逆Lが3つ重なった場合もありました。きめ細かな情報提供とはいえ再検討をします。

ラジオの場合は、スーパーは使えず、割り込まざるを得ません。
より身近な情報提供の伝え方を再度検討します。コミュニティ放送や災害放送との連携も検討しています。今回の震災では被災した市内のコミュニティ放送局と連携しました。被災者の方々へ必要な情報を届けていく考え方が重要と思います。

取材情報の伝達のために通信設備、通信手段の確保は欠かせません。携帯電話が使えず大きな問題でした。
優先電話もつながらない場合があり、衛星携帯はつながりましたが移動時の使い勝手が悪い。通信手段の整備も大きな課題です。

公共情報コモンズの動きに関心をもっています。整備を期待したいと思います。
我々放送人としては、今も役割が続いています。「被災者の今」、「復興計画の在り方」、「検討状況」などを地域でも伝えます。防災の検証、復興を記録する役割もあります。
半年経ちましたが復興には時間を要します。NHKとして様々な改善をし、地域の放送局としての役割を果たしていきたいと思います。