「東日本大震災による通信網被災の状況と今後の対策」
東日本電信電話株式会社
取締役 東北復興推進室長 宮城支店長 南川 夏雄 様
<講師プロフィール>
昭和56年 4月 日本電信電話公社 入社。
平成11年 7月 東日本電信電話株式会社人事部担当部長
平成15年 7月 同 設備部 担当部長
平成19年12月 同 ネットワーク事業推進本部設備部担当部長(設備計画部門長・NGN推進PT)
平成20年 6月 同 宮城支店長
平成23年 6月 同 取締役 東北復興推進室長 宮城支店長
NTT東日本 東北復興推進室長、宮城支店長の南川です。
東日本大震災から200日が過ぎましたが、現場としては、応急復旧は完了したものの、復興はこれからであり、取組まなければいけないことが一杯ある状況です。
今回の大震災では多くの方が亡くなられ、被災されました。心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。本日は大震災発生で何が起き、どう行動し対処していたか、これからどうしていくのかをお話しさせて頂きます。
投影資料まず、弊社の被災状況についてお話させて頂きます。発災時に385の通信ビルが機能停止という状況に陥りました。
その影響で、約150万に及ぶお客様に対して一時的にサービス中断する状況が発生し、心からお詫び申し上げます。
今回の弊社の通信設備の被災状況を分類すると、「広域、長期停電による電力の枯渇によるサービス中断」、「津波による通信ビルや中継ケーブル全壊、流失、浸水等によるサービス中断」、「津波によるお客様宅への架空ケーブルの流失や電柱倒壊」となります。
地震による被害はほとんどなく、ほぼ全てが津波及び電源枯渇によるサービス中断という状況でした。
大震災発生後も電話やインターネット等ご利用できていたかと思いますが、これは、自前電源で電力を確保し、通信サービスを維持しておりました。
しかしながら、商用電力が回復しない中、予備用バッテリーの完全放電や自前発電機の補給用油の確保も難しくなり、震災後半日から数日の間に通信機能が止まるということになりました。
ここで、被災状況及び発災時からの弊社の震災対応状況をご説明させて頂きます。
現地におりまして、通信確保、及び被災自治体や被災者の支援を第一に活動しました。
時間とともに情報が変化し、情報収集とアクションをいかに早く繰り返すかを常に考えて活動しておりました。
発災直後に災害対策本部を立ち上げ、被災者への通信サービスへの確保として、広域停電に対応し全国から移動電源車の召集、長期に及ぶ被災対応のための燃料確保、災害用伝言ダイヤル(171)の起動、避難者への通信確保としての無料公衆電話の設置等に次々に取り組みました。
被災地の情報収集も重要であり、ヘリコプターで被災地を飛び、弊社の通信ビルの状況を収集しました。一例として震災後の女川ビルの状況をご紹介しますが、津波により、壊滅状態となっており、辛うじてビルが残っている状況でした。また、道路や橋脚の流失等による通信ケーブルの被災も発生しておりました。
刻々と変わる状況を随時、情報収集震しながら、通信サービスを確保するためにその都度方針を定めながら復旧に取り組みました。まず直面したのが広域停電であり、それに対応した電源確保の確保は何より重要でした。弊社では各通信ビルに商用電力の停電に備え発電機、蓄電池等の予備電源を配備しています。
しかし、今回は全エリアにわたり広域で長時間の停電であったため、蓄電池の電力が枯渇するビルが相次ぎました。そのようなビルに全国から召集した移動電源車や可搬形発電機を配備し、通信の復旧を行いました。
石巻エリアは3月19日には電話やインターネット等の通信サービスを再開しましたが、写真にもあるように、4月下旬に商用電力が回復するまで、移動電源車による自前電源を確保し、移動電源車の燃料補給用にタンクローリーも横付けにして、サービスを提供しておりました。
また、津波により通信ビルが全壊、流失又は浸水したビルについては、全国からトレーラに搭載可能な災害復旧用の通信用BOXを集め、高台等に設置し、サービス回復を行いました。
次に、被災者への通信確保と支援についてですが、公衆電話の無料化、避難所等への特設公衆電話の設置、衛星携帯電話の提供、無料インターネット環境の提供、電話料金の減免等の実施をしています。
災害用伝言ダイヤル(171)は、阪神神戸大震災の後に災害対策として実現したサービスです。
今回、新潟中越地震の時の利用数より10倍程度多い、約340万件のご利用がありました。 171は、安否確認用の手段として認知されるようになって、日頃から、訓練でも使われる方々が多くなっています。
ここからは、現在、弊社が進めている本格復旧工事と本格復興にむけた自治体及び
お客様への支援内容を紹介します。
本格復旧工事ですが、震災後から頂いているお客様の声を反映した形で取組んでおります。まず、津波対策として津波による全壊、流失又は浸水したビルについては、高台への移設や水防対策を実施します。また、通信ビルを結ぶ中継区間の信頼性を確保するため、内陸への中継ルート確保などを進めています。広域停電に対応できるように、自前発電機の増設等の電力枯渇から守る施策も実施して行きます。
自治体及び、お客様への支援内容ですが、それぞれの被災地域における復興計画に基づきながら、信頼性の高い情報通信基盤(ICT)を提供し、安心・安全なまちづくり、
企業における事業の発展に役立つ等、復興に向けたICT利活用の支援を進めています。今回の本格復旧工事により、震災前の信頼性を確保し、災害に強い通信インフラを整備し、それを利用した防災、医療・教育、行政等へのICT利活用の提案や支援を実施しています。
避難所で情報装備化が進んでいない実態を踏まえ、避難所等の地域コミュニティ拠点には、最新の情報通信環境整備を支援していきたいと思っています。
日常時には、地域のイベント情報の提供や観光情報、行政情報などを配信することが出来、災害時にはこの環境を用いての安否確認、災害情報の入手、被災情報の発信などを、また、避難所には無料公衆電話、無料インターネット環境のタイムリーな設置が出来ることを目指しています。
この地域コミュニティの拠点の「情報ステーション化」は、今後の防災対策として、大切な取組みだと思っています。
最後に、被災された地域の一刻も早い復興に向けて、地域の皆様と一緒に活動していくことが、地域に根ざした事業者としての使命として、取組んで行きたいと思います。